2009-02

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煙の向こうのその先に…

「お前、意味なんかあると思うか?」
小春日和の昼下がり。
今日は風が弱いから日当たりの良い屋上は授業をサボるのにはもってこいだ。
隣で空を見上げていた修吾が徐に声をかけてきた。
文法もクソもあったもんじゃない。
隣から聞こえる半ば投げやりなその声に、とりあえず返事を返した。
「人に話しかける時は主語述語をハッキリさせて言いたいことが分かるように文章組み立ててからにしましょう。…お前授業サボってないで国語の勉強したほうがいいんじゃねぇのか?何の意味だよ」
「…人生」
どうやら面倒臭い問答になりそうだ。聞かなきゃ良かった。
軽く鼻で笑ったのがバレたのだろう。
寝転がったまま不機嫌そうな顔をこちらへ向けた。
「なんやねん、お前。人が珍しく真剣に話ししてんやからちっとはマジメな返答返さんかい」
「お前がそんな哲学的な事言い始める時点でなんかのネタだろ?ちょっと振りが甘いぜ、どこから切り込んでいいやら」
「阿呆」
アホと来ましたかそうですか。
黙っていれば何か言い出すだろうと思って、俺は黙って煙を吐き出した。
空へ吸い込まれるように紫煙が上へ上へと上がっていく。
こいつもいつか雲になるんだろうか。
「俺な、たまに分からんようになるんや。みんなで机並べて、社会に出たら使わんようないらん知識ばっか詰め込まれてなんになるんやろうな」
「お前授業なんか殆ど出てねぇじゃねぇか」
「そういう問題とちゃうねん」
なにがちゃうねんやねん。あ、うつった。
修吾は俺のポケットから煙草とライターを勝手に取って火をつける。
「お前煙草吸うんだっけ」
「センチメタルな気分になった時はちょっと吸いたくなるんや」
「センチメンタルだろ」
「おう、それや」
何がセンチメンタルだ。
クラスの奴等が耳にしたら隠れて噴き出すに違いない。
何せ「鬼人」との異名まで持つ乱暴者がセンチメタルな気分に浸っているらしいのだから。
(俺に言わせれば「鬼人」っつうより「奇人」だが)
「なんやねん、お前。俺これでも悩んでるんやぞ?ちっとは慰めんかい」
「そんな態度のでかい奴慰めるまでもねぇよ」
俺は修吾に取られた煙草の箱を奪い返しながら言う。
今朝下ろしたばかりなのにいつの間にか残りはあと2本になっていた。
家のストックもそろそろ底を着くはずだ。
帰りにコンビニで1カートン買って帰ろう。
「分かってへんなー、お前は。俺シャイやから素直にしょげかえれんねん。察してくれ」
「お前がシャイなら全人類シャイになっちまうぜ。俺そんな悲惨な星に住みたくない」
「アホ抜かせ」
こっちの台詞だ。
肺の隅々まで煙で満たして、ゆっくりと吐き出す。
風下の修吾がモロに煙を浴びて顔を顰めた。
口にくわえた煙草もあまり美味そうには見えない。
無理するくらいなら吸わなきゃいいのに。
俺は全ての煙を肺の外へ出してやってから、少し考えて、言った。
「俺も考えた事あるよ。生きてて意味あんのかなー、とか」
「ほんまか。ガラにも無いな」
お前もだ、と言い返したくなるがやめておく。
「けどさ、考えても答えなんか出ねぇじゃん、多分。考えるだけ無駄ならもっと時間を有効利用しようと思ったわけよ」
「どんなふうに?」
「色々あるだろ」
「どうせまたエロ本読み漁ったりエロ本読み漁ったりエロ本読み漁ってんねやろ」
「人聞きが悪い」
「否定せんのか」
「…できん」
俺の答えを聞くと、修吾はくっくっと笑った。
こうして笑っていれば女たちが好みそうな結構甘い顔なんだが、なぜだか人前に出ると眉間にしわがよる。
シャイだとかいうのはあながち間違ってはいないのかもしれない。
「お前みたいな奴でもそんなこと考えるんだな」
「なんや、引っかかる言い方やな」
「気にするな」
声にかぶさるように間延びしたチャイムが鳴り響いた。
「次体育だろ。俺出るぜ」
学生服に付いた砂埃を適当に掃いながら立ち上がって伸びをした。
「体育バスケやろ?お前にばっかいいとこ見せられんのも気ィ向かんなぁ」
ぶつぶつ文句を言いつつも、結局自分も身体を起こす。
「俺野球派やもんなぁ。お前、俺のバッティング見たら惚れ込むで?マツイもびっくりの華麗なるホームラン」
「はいはい」
「あ、信じてへんな?ほんまやで」
何が生きてる意味だ、こいつ。
ちょっと真剣に考えちゃった俺がバカみたいじゃないですか、この状況。
結局こんなもんだろう、俺たちが生きてる意味なんか。
得意なスポーツでちょっと女にキャーキャー言われて、つまらない授業は聖書(内容はホラ、分かるだろ?)を読んでやり過ごす。
で、たまに「桐耶くん、よかったらこれ食べて」なんて手作りのクッキーなんかもらっちゃったりして。
「・・・それで十分だろ」
「なんや?マツイの話か?」
陽だまりの中の俺たちを悪戯に風がなぞって行く。

今日はよくシュートが決まりそうだ。



※追記にてあとがき的なもの。

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